地下書庫巡礼記

どこかに眠る、懐かしの物語を探して

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高村薫『晴子情歌』|母と子をつなぐ糸

高村薫著『晴子情歌』を読みました。

一人の人間の生きてきた足跡から「人が生きてそして死ぬこと」の意味を探る、華やかさはなくとも胸が詰まるような感情でじんわりと満たさせるなんとも味わい深い作品です。

 

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グッとくる物語の作り方|『「感情」から書く脚本術』

小説や映画、音楽などの物語の中に、ふと琴線に触れる何かを感じ取ったとき、「グッとくる」という感想を私は咄嗟に思い浮かべる。

では、その「グッとくる」現象の正体とは何だろう? と考えてみる。心を動かすスイッチを押す正体は何だろう? と。

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皆川博子『辺境図書館』|読書体験を通じた共感・作家の死後について

皆川博子著『辺境図書館』を読みました。

皆川氏の愛好する作品の中から「素晴らしいけれど忘れられがちな古い作、あるいはおびただしい出版物の中に埋もれがちな作」とのコンセプトに基づき選出された、25の章立ての読書案内です。

 

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『バグダードのフランケンシュタイン』アフマド・サアダーウィー|イラク社会への自己言及

バグダードフランケンシュタイン』を読みました。

帯には「中東×ディストピア×SF小説」とありますが、ディストピアやSFというよりは、「フランケンシュタインの怪物」を現代イラクに顕現させることでイラク社会の姿を描いた、イラク在住イラク人作家による社会派ファンタジーでしょうか。

 

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『シオンズ・フィクション イスラエルSF傑作選』の感想|放浪の末の豊かなるフィクション

 イスラエルSFアンソロジーの『シオンズ・フィクション』を読みました。

 本書は、「イスラエル思弁小説の宝庫 ( A Treasury of Israeli Speculative Literature)」という副題がついており、「思弁小説(スペキュラティブティブ・フィクション、Speculative Fiction)」のカテゴリーで、狭義のSFに留まらずに比較的幅広くセレクションされたアンソロジーです。

 

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