地下書庫巡礼記

どこかに眠る、懐かしの物語を探して

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髙村薫

『太陽を曳く馬』 人は死を語りうるか?

私たちは生きている限り、当事者としての「死」を認知しえない。それでも人間である以上、必ず訪れる生物としての「死」。そのような「死」について、私たちは真実何かを語ることはできるのだろうか? *** 髙村薫著『太陽を曳く馬』では、人の生死とその…

『新リア王』の時代観 老いゆく者に未来は見えない

髙村薫著『新リア王』を読んだ。 青森の名士・福澤家を題材にした三部作の第二作目にあたる。 母と子の繋がりを描いた第一作『晴子情歌』に続き、『新リア王』では父と息子の対話を通して、世代継承と時代の移り変わりを描く。 題名通りまさに「悲劇」に至る…

高村薫『晴子情歌』|母と子をつなぐ糸

高村薫著『晴子情歌』を読みました。 一人の人間の生きてきた足跡から「人が生きてそして死ぬこと」の意味を探る、華やかさはなくとも胸が詰まるような感情でじんわりと満たさせるなんとも味わい深い作品です。

高村薫『李歐』の感想|魂なき肉体と実像なき精神、その出会い

暖かくなってきましたね。春といえば桜、桜といえば『李歐』と連想して、おもむろに本棚から取り出して再読していました。 あらすじ上はロマンティックなノワール小説なのですが、その背景で、主役二人の造形や結びつきが象徴する概念のようなものが見えるよ…

高村薫『我らが少女A』の感想|いっそのこと真相など分からないほうがいい

合田シリーズ6作目の『我らが少女A』を読みました。 1993年発表の1作目『マークスの山』では30代だった合田も、本作では50代後半となり、漠然と老いを意識し始めるなど確実に歳月が流れていることを実感します。