地下書庫巡礼記

どこかに眠る、懐かしの物語を探して

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『太陽を曳く馬』 人は死を語りうるか?

私たちは生きている限り、当事者としての「死」を認知しえない。それでも人間である以上、必ず訪れる生物としての「死」。そのような「死」について、私たちは真実何かを語ることはできるのだろうか? *** 髙村薫著『太陽を曳く馬』では、人の生死とその…

『新リア王』の時代観 老いゆく者に未来は見えない

髙村薫著『新リア王』を読んだ。 青森の名士・福澤家を題材にした三部作の第二作目にあたる。 母と子の繋がりを描いた第一作『晴子情歌』に続き、『新リア王』では父と息子の対話を通して、世代継承と時代の移り変わりを描く。 題名通りまさに「悲劇」に至る…

『骨の山』を考察する 黙して語る〈結びつき〉のレトリック

アントワーヌ・ヴォロディーヌ著『骨の山』(濵野耕一郎訳) を読んだ。 ある種の共通した哀しみを持つ者同士の紐帯を実験的な手法で描く、ヴォロディーヌらしい小説だ。

『天涯図書館』「書くこと」の意味についての模索

皆川博子著『天涯図書館』を読んだ。 『辺境図書館』『彗星図書館』につづく、皆川氏による書籍案内エッセイである。 幻想小説や詩歌を中心とした選書なのは変わらずだが、2020~2023年連載の時勢を反映し、「ロシア情勢」「(戦争、パンデミックを引き金とす…

『スマイリーと仲間たち』ジョン・ル・カレ|これまでの人生との対峙

ジョン・ル・カレ著『スマイリーと仲間たち』を読んだ。 『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』『スクールボーイ閣下』に続く〈スマイリー三部作〉の第三作目にあたり、スマイリーと宿敵カーラの決着の模様が描かれる。 最終章ということもあってか…

『蠅の王』夢想家サイモンに関する覚書

ゴールディング『蠅の王』について全体を通した感想はこちらの記事に書いたのですが、一点書き残していたのがSimonについてでした。 Simonは、「腐敗した豚の首」に ”lord of the flies” なる存在を幻視し、「それ」との対話を通じて人間心理への考察を深め…

『蠅の王』を原書で読む 集団における人間関係の理

ゴールディング『蠅の王』を原書で読んだ ( 原題:"Lord of the Flies" )。 なんとなく馬が合わなさそうな者同士でも、表面上はうまくやっていかないといけない場面というのは、生きている上でよくあると思う。社会や組織、共通の利害を持っている集団内にあ…

『アルト・ソロ』アントワーヌ・ヴォロディーヌ|青き悠久のユートピア

アントワーヌ・ヴォロディーヌ著『アルト・ソロ』を読んだ。 幻想小説の形を取った、社会体制から零れ落ちた者たちの緩やかな連帯を描いた小品だ。

『スクールボーイ閣下』ジョン・ル・カレ|名も無き者たちに捧げるは

ジョン・ル・カレ著『スクールボーイ閣下』を読んだ。 英国情報部の中枢部に潜り込んだ二重スパイを追う『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』の続編であり、〈スマイリー三部作〉の第二作目にあたる。 優れた観察眼を通じて描かれる泥臭い人間ドラ…

『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』ジョン・ル・カレ|裏切り者探し、大人たちの世界と少年

ジョン・ル・カレ著『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』を読んだ。 東西冷戦時代を背景にしたスパイ小説で、2011年には「裏切りのサーカス (原題 ”Tinker Tailor Solder Spy”)」として映画化されている。 先日、この映画「裏切りのサーカス」を観…

高村薫『晴子情歌』|母と子をつなぐ糸

高村薫著『晴子情歌』を読みました。 一人の人間の生きてきた足跡から「人が生きてそして死ぬこと」の意味を探る、華やかさはなくとも胸が詰まるような感情でじんわりと満たさせるなんとも味わい深い作品です。

グッとくる物語の作り方|『「感情」から書く脚本術』

小説や映画、音楽などの物語の中に、ふと琴線に触れる何かを感じ取ったとき、「グッとくる」という感想を私は咄嗟に思い浮かべる。 では、その「グッとくる」現象の正体とは何だろう? と考えてみる。心を動かすスイッチを押す正体は何だろう? と。

皆川博子『辺境図書館』|読書体験を通じた共感・作家の死後について

皆川博子著『辺境図書館』を読みました。 皆川氏の愛好する作品の中から「素晴らしいけれど忘れられがちな古い作、あるいはおびただしい出版物の中に埋もれがちな作」とのコンセプトに基づき選出された、25の章立ての読書案内です。

『バグダードのフランケンシュタイン』アフマド・サアダーウィー|イラク社会への自己言及

『バグダードのフランケンシュタイン』を読みました。 帯には「中東×ディストピア×SF小説」とありますが、ディストピアやSFというよりは、「フランケンシュタインの怪物」を現代イラクに顕現させることでイラク社会の姿を描いた、イラク在住イラク人作家によ…

『シオンズ・フィクション イスラエルSF傑作選』の感想|放浪の末の豊かなるフィクション

イスラエルSFアンソロジーの『シオンズ・フィクション』を読みました。 本書は、「イスラエル思弁小説の宝庫 ( A Treasury of Israeli Speculative Literature)」という副題がついており、「思弁小説(スペキュラティブティブ・フィクション、Speculative …

高村薫『李歐』の感想|魂なき肉体と実像なき精神、その出会い

暖かくなってきましたね。春といえば桜、桜といえば『李歐』と連想して、おもむろに本棚から取り出して再読していました。 あらすじ上はロマンティックなノワール小説なのですが、その背景で、主役二人の造形や結びつきが象徴する概念のようなものが見えるよ…

高村薫『我らが少女A』の感想|いっそのこと真相など分からないほうがいい

合田シリーズ6作目の『我らが少女A』を読みました。 1993年発表の1作目『マークスの山』では30代だった合田も、本作では50代後半となり、漠然と老いを意識し始めるなど確実に歳月が流れていることを実感します。

バルガス=リョサ「子犬たち」の感想|「普通」であるという特権

長い間積読の山に埋もれさせていた『ラテンアメリカ五人集』なのですが、一たび読み始めるとめちゃくちゃ面白いですね。特にぐっときたのが、リョサの「子犬たち」でした。

皆川博子『愛と髑髏と』|日常を生きていけない者たち

1985年刊行の『愛と髑髏と』が復刊されましたね。未読だったのでとてもありがたいです。

山尾悠子『飛ぶ孔雀』の感想②|滅びの美学のその先

今回の記事では、物語の中で重層的にリフレインされるモチーフの幾つかに言及し、その上で『飛ぶ孔雀』以前の同作者の著作群から見た作風の変遷について述べたいと思います。

山尾悠子『飛ぶ孔雀』の感想①|行き違う姉妹は増殖する世界で

寡作な幻想小説家として知られる作者の連作長編『飛ぶ孔雀』をようやく読みました。 あまりに凄い。凄すぎる。これはとんでもない小説を読んでいるのでは……と興奮で打ち震えながら読み進めたのですが、読了した今となっても未だ熱に浮かされたような状態です…

戸川昌子『緋の堕胎』

シャンソン歌手としても活動していた作者による官能ミステリ短編集。 妖しい筆致で物語られるミステリ、幻想、奇想がバリエーション豊かに収録されています。

皆川博子『夜のアポロン』

70~90年代発表の単行本未収録作品。ミステリ中心に集められており、先行して出版されている幻想小説中心の『夜のリフレーン』と対になるかのような一冊です。

ササルマン『方形の円』

ギョルゲ・ササルマンの『方形の円』を読みました。

カナファーニー『ハイファに戻って/太陽の男たち』

こんにちは。 カナファーニーの『ハイファに戻って/太陽の男たち』を読みました。

リャマサーレス『黄色い雨』

こんにちは。 フリオ・リャマサーレスの『黄色い雨』を読みました。

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